2015年3月31日火曜日

序論

私たち「新学事暦の導入に反対する学生有志」は、東京大学で2015年度から導入される新学事暦に反対する活動を行ってきました。

活動に対する総括

前述の通り、要求書に対して誠意ある回答は得られませんでした。これは、私たちの力不足も要因の一つです。まず、何人かから指摘を受けたように、次年度の学事暦を変更させるには、活動を始めるのが遅すぎました。もちろん、大学側の情報の開示自体が遅かったことに起因するものではありましたが。また、東大新聞だけでなく、外部のメディアに取り上げてもらうことができれば、もう少し身のある回答が得られたかもしれません。その他の面においても、大学側が意図的な無視や誤読をすることなく回答してくれるだろうという認識の甘さがありました。

しかし、全く何の成果も無かったというわけではありません。理学部・工学部の方針転換は、「昨今の学内における議論をふまえ」とあるように、私たちの活動の影響があると考えて良いと思われます。結果的に要求1.3の一部が達成されたことになります。


完全な結果が得られないとしても、学内で議論を行い、意見を表明することは全くの無駄ではありません。私たちの活動の記録を残すことで、今後、学生間での議論の一助となればと思います。

回答に対する所感

理事からの回答には、私たちの要求に関して一切具体的な返答がありませんでした。既存の資料をもって要求への返答とするのは、新学事暦の内容にも導入の過程にも問題はなく、疑問を抱く学生は理解が不足しているに過ぎないという態度の表明です。

返答に添付された「新たな学事暦に係わるQ&A」には、確かに私たちが4学期制の問題であるとし、見直しを要求した点に触れられてはいます。しかし、それらは全て、「問題点は存在するかもしれないが、利点もある」という形式です。利点が存在することを理由に、4学期制への反対の声への返答とすることは、全く議論の体を成していません。全く逆のことも言えるからです。利点も問題点もあるからこそ、当事者である学生や院生を含めて十分に協議され、決定される必要がありました。しかし、学生には、メリットとデメリットのどちらが大きいかを判断し、表明する機会は存在しませんでした。4学期制の実態を明らかにした後、十分に周知されたアンケートを行うなどして学生の意見を調査していない以上、大学側の論理は一切の正当性を持ち得ません。

さらに、今後の改革に関する要求(要求2.1~2.4)に関しては、大学側の見解すら示されませんでした。今後も、改革に際して学生の意見を反映しようという意思は全くないのでしょう。「本学では、従前から学生の皆さんの主体的意見を尊重しています」とはよく言えたものです。

学生による要求を「貴重なご意見をお寄せいただいたことに関して、感謝の意を表します」の一言で片付け、要求に対しては具体的返答をしないというのは、不誠実かつあまりにも学生を軽視していると考えます。

この回答から分かったのは、結局、大学側は学生の意見を聞き、議論を成立させる意思は皆無であり、単に回答したという事実のために回答したということだけでした。

回答文書本文

新学事暦の導入に反対する学生有志の皆さんへ

 新学事暦の導入に際して、学生有志の皆さんが改めて関心を持ち、貴重なご意見をお寄せいただいたことに関して、感謝の意を表します。

 過去約4年間にわたる全学的な検討を経て、具体的施策の決定に至った学部教育の総合的改革は、本学のすべての学生が、豊かな教養と深い専門性を備えた人材となるよう学部教育の質の向上を目指しています。特に、学部学生に対して、本学がこれまで提供してきた以上に、海外体験・異文化体験の機会を提供できるような教育システムを整え、その結果、社会が本学の学生に期待するコミュニケーション能力や行動力をより効果的に身につけられるよう設計しています。

 平成27年度から、教育内容・方法の抜本的改革とともに、新学事暦による4ターム制が始まります。これにより、従来の授業スケジュールの他に、週複数回授業など様々な教育方法を組み合わせた集中的学びの期間を設定できるようになり、学生の皆さんの大学での学修や活動に、より柔軟に対応できる教育スケジュールの提供が可能になります。さらに、長期集中型の休業期間を設けることで、海外への短期留学や社会体験への参加がしやすくなるだけでなく、ターム単位の留学も可能になります。移行に向けて、各学部とも、在学生の皆さんに対して特に慎重な配慮を行い、皆さんが、新学事暦を含む新しい取り組みを十二分に活用できるよう、準備を進めています。皆さんにも、この改革によりいっそう能動的にかかわり、自分の力を大いに伸ばしていただきたいと願っています。

 学部教育の総合的改革の検討経緯および実施方針については、2013年度学内広報特別号NO.1443(2013.09.02)「学部教育の総合的改革~ワールドクラスの大学教育の実現のために~」
  http://www.u-tokyo.ac.jp/gen03/kouhou/1443/pdf/1443.pdf
および、総長談論
  http://www.u-tokyo.ac.jp/president/
にその詳細を掲載しております。また、今回の学生有志の皆さんからのご意見を含む、これまで広く全学からいただいた様々なご指摘やご意見については、平成26年11月に公表した「新たな学事暦に関わるQ&A」
  http://www.u-tokyo.ac.jp/stu04/pdf/gakujireki_qa_20141117_ver.1.1.pdf(編注:現在はリンク切れ)
の中で詳しくお答えをさせていただいております。ぜひ、ご参照いただけますようお願い申し上げます。

 本学では、従前から学生の皆さんの主体的意見を尊重しています。今回のご意見に関しても、改めて感謝申し上げるとともに、真摯に受け止め、本学のさらなる発展のために、全学の構成員の皆様と共に研鑽に努める糧とさせていただく所存です。


平成27年2月20日

理事・副学長(教育担当) 相原博昭
理事・副学長(学生担当) 長谷川壽一

 

回答

223()、郵送にて回答が届きました。
回答文書の他、学内広報no.1443新たな学事暦に係わるQ&A(現在は大学のホームページから削除)が添付されていました


回答文書本文は次回投稿に掲載します。


回答と前後して、工学部・理学部の次年度の学事暦の変更が発表され、4学期制移行前と似た学事暦となり、5つのタームすべてに授業が存在するという状況はなくなりました。

要求書提出

130()本郷キャンパス学生支援センター地下一階(モール階)にて、6人の教員を含む161人の賛同者の氏名・所属と共に、要求書を本部学生支援課に提出しました。

東京大学新聞社が取材に訪れてくれ、その模様は210日号に掲載されました。東京大学新聞Onlineでも読むことができます。
東京大学新聞Online-「新学事暦の導入に反対する学生有志」要求書を提出

ビラ(2)本文・裏(要求書)

平成271N

東京大学総長 濱田 純一 様
同理事・副学長 前田 正史 様
同理事・副学長 松本 洋一郎 様
同理事・副学長 長谷川 壽一 様
同理事・副学長 相原 博昭 様
同理事 江川 雅子 様
同理事 戸渡 速志 様
同理事 苫米地 令 様 


要求書

初春の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度、平成27年度から導入される新学事暦は、学生の学習や研究を妨げ、生活環境に悪影響を及ぼすとともに、学生の主体性を無視した一方的な改革であると考え、以下の要求を致します。大学の構成員全ての実態を勘案し、誠意を持ってご検討頂くようお願い申し上げます。なお、本要求および回答は公開を前提としていることをご了承下さい。



新学事暦の導入を見直すこと。特に、以下の点で改善を行うこと。
1.1 全学で授業期間と休業期間を統一すること。
1.2 1年間のうち、5つのターム全てに授業が存在する状態にならないようにすること。
1.3 授業時間は105 分に変更せず、現行のままとすること。

今後、学生生活に重大な変化を及ぼす制度改革について、学生の自治を尊重し、以下のように行うこと。
2.1 決定前に各学部自治会やその他の公認された学生自治団体との協議を行うこと。
2.2 必要に応じて学生へのアンケート調査等を行い、意見が反映されるようにすること。
2.3 決定後は、速やかに教職員、学生への周知を行うこと。

2.4決定から導入までに内容の有効化と各部局での調整のために十分な期間を設けること。

以上の要求について、1M日までに回答されること。

以上

この面は裏です。表面からお読み下さい。

ビラ(2)本文・表

新学事暦の導入の見直しを求める要求書の賛同者を募集します

先週配布した「私たちは新学事暦導入に反対します」のビラは読んでいただけたでしょうか。

新学事暦で4ターム制や105分授業が導入されれば、学生の学習を妨げ、生活環境に悪影響を及ぼす大きな変化が起こります。
文理やキャンパスによって授業期間と休業期間が異なるため、他学部、他学科の聴講が難しくなり、分野横断的な学習が妨げられます。また、休業期間が他大学と異なるため、インターンシップなど就職活動や、部活やサークルなどの課外活動に支障が生じます。
新学事暦のもとで前期課程から理系の学部に進学すると、2年次は5ターム全てに授業があることになります。また、現在工学部に内定している2年生は、移行期間のためやはり来年度は全てのタームに授業が行われます。十分な長期休業期間にサマープログラムやインターンシップなどの自主的な活動ができるという目的は実現されないどころか、より難しくなるでしょう。
授業時間の変更により、1限が8:30開始、5限は18:35終了となります。遠方に住む学生の通学の負担が大きくなるほか、アルバイトなどに割ける時間が少なくなります。学習環境維持のために遠方の学生が大学の近くに住居を確保したり、学費や生活費を支えるアルバイトの時間を減らしたりすることが必要になれば、特に所得に余裕がない家庭の経済状況はますます厳しくなり、所得による教育格差の拡大にも繋がりかねません。

このように学生の学習や生活に大きな影響を与える改革であるにもかかわらず、新学事暦の導入が決定されるまでに、学生自治会との交渉やアンケート調査などの学生生活の実態を反映するための試みはなされませんでした。さらに、導入の半年前まで学生に新学事暦の詳細な内容を発表しませんでした。
このような一方的な改革が実行される背景には、近年の大学では教授会の権限が縮小され、学長による上意下達の組織化が進められているという状況があります。このような体制下では、教職員や学生の声を無視した運営がなされ、「大学の自治」は有名無実のものとなってしまいます。このまま新学事暦の導入を傍観すれば、今後このような強引な改革は加速されるでしょう。

来年度から導入されることになっている新学事暦の導入を撤回させることは困難でしょう。しかし、学生生活への悪影響が大きい新学事暦の導入のような一方的な改革に対して、傍観を保っていていいのでしょうか。本来研究や教育の現場を守るべき各学部・研究科の教授会が役員会の決定に異を唱えることができなくなりつつある現在、学生自身がより良い教育・研究環境のために主体性を持って意見を表明していく必要があります。
そこで私たち学生有志は、裏面の文書を濱田総長と理事7名に提出し、新学事暦の見直しを求めていくとともに、学生や教職員の声を聞いた大学運営を行うよう要求することにしました。

裏面に掲載した文書の連名の賛同者になっていただける東大の教職員、学生の方を募集します。下記の連絡先まで、名前と所属を明記して119日までにご連絡下さい。ご連絡いただいた個人情報は、賛同者として提出文書に掲載すること以外には使用せず(ビラ等にも掲載しません)、責任を持って管理いたします。一度ご連絡をいただいた後でも、119日までに再度ご連絡をいただければ、賛同者となることをとりやめることも可能です。

2015113

新学事暦の導入に反対する学生有志
特定の政治団体とは一切関係ありません。

mail:UTfourterms@gmail.com
twitter:@UTfourterms

ビラ(2)

114()15()に、2枚目のビラを駒場キャンパスの各教室で計6000枚程度配布しました。本郷キャンパスでは、その週の昼休みに正門前にて配布しました。


また、ネット上でメールアドレスを調べることができた教員に対して、1枚目・2枚目のビラのpdfファイルと共に、賛同者を募集している旨をメールでお知らせしました。

本文は次回・次々回の投稿に掲載します。


ビラ(1)本文

私たちは新学事暦導入に反対します

新学事暦の実態
前期課程の学生向けには201481日、後期課程の学生向けには2014929日、平成27年度からの学事暦の変更が発表されました。変更点は、4ターム制の導入と授業時間の変更に大別されます。

4ターム制では、下図のように駒場(教養学部、理学部数学科)と文系学部、本郷の理系学部で異なる授業期間となります。

 このように文理やキャンパスで分断された学事暦では他学部、他学科の聴講が難しくなるでしょう。また、週1コマの授業・週2コマの授業・2ターム連続の授業が混在することになり、時間割が組みづらくなります。分野横断的な学習を妨げる制度は、学際的領域が重要視される現代の研究の現状から乖離しています。
さらに、休業期間が他大学と異なるため、インターンシップや就職活動、課外活動に支障が生じます。

授業時間は現行の90分から105分に変更されます。

授業開始は早く、授業終了は遅くなることで、遠方に住む学生にとっては通学の負担が大きくなり、アルバイトなどにも時間が割けなくなるかもしれません。

導入過程の問題点
このように私たち学生の学習や生活に大きく影響を与える問題であるにもかかわらず、大学側は新学事暦の計画にあたって、学生の意見を取り入れようという姿勢を見せませんでした。学生自治会の意見を聞いたり、個々の学生にアンケートを取ったりするなど、学生生活の実態を反映する方法は多数存在するはずです。それどころか、20137月に行われた役員会で4学期制の実施が決定されたにもかかわらず、新学事暦の詳細な内容を導入の半年前まで学生に発表しませんでした。直前まで実態を知らせず、有無を言わせず導入してしまおうというのが当局の意図ではないでしょうか。
1015日には、駒場で「濱田総長と語る集い」が開かれましたが、決定後の新学事暦の趣旨を学生に説明するものでした。質疑応答での多くの学生による不満の声も制度改善に生かされることはなく、「ガス抜き」でしかありません。
このような大学側の態度は、学生自身が学生生活に関して大学の運営に参加する、学生自治の原則を根本から否定するものです。

新学事暦導入の背景
新学事暦の導入は、濱田総長が当初提唱した秋入学構想の代案として提案されたものです。秋入学自体は、教授会の反対や、社会制度や他大学との足並みが揃わなかったことなどにより導入が見送られましたが、政府は「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」を設置し、引き続き支援しています。秋入学や新学事暦の導入に政府の誘導があるのは明らかです。また、秋入学が実現しなかったことに対して、学長の方針が実現しないのは大学のガバナンスの機能不全であり、教授会は「抵抗勢力」であるとの声もありました。中央教育審議会では、「学長のリーダーシップを発揮できる仕組みが必要である」とされています。

来年度から施行される学校教育法と国立大学法人法の改正法では、教授会の役割は大幅に縮小されます。教授会は「重要な事項を審議する」機関から、「学長が決定を行うに当たり意見を述べる」機関とされました。また、教授会が審議する内容は学位の授与や教育課程の編成に限定され、人事や予算等は明記されませんでした。
従来、国立大学は教授会の審議によって運営されてきましたが、2004年の法人化以来、学長へ権限を一極集中させ、政府や財界の意向通りに運営させるという構造に変化しつつあります。このような体制下では、教職員や学生の声を無視した一方的かつ強引な改革が行われ、「大学の自治」は有名無実のものとなります。現場で研究や教育に携わる教職員や学生の意見を無視し、学長と経営執行部が大学の運営を行うのが健全な大学の姿でしょうか。

このまま新学事暦の導入を傍観すれば、当局は学生の実態を無視した改革を加速させます。私たちは、新学事暦の撤回を求めていくとともに、学生や教職員の声を聞いた大学運営を行うよう要求していきます。

画像は「平成27年度に本学に在籍する学生・教職員、並びに本学関係者の皆さんへ」
から引用しました。

201515

新学事暦の導入に反対する学生有志
特定の政治団体とは一切関係ありません。
mail:UTfourterms@gmail.com
twitter:@UTfourterms

ビラ(1)

201515()の始業前に、1枚目のビラを駒場キャンパスの各教室で約2000枚配布しました。同時にtwitterアカウントを作成しました。
本郷キャンパスでは、その週の昼休みに赤門前や正門前にて配布しました。

本文は次回投稿に掲載します。



当団体の結集

201411月はじめ、発起人Ktwitter上の友人T君に「新学事暦に反対する運動をしないか」と声をかけたことから始まりました。
両者の友人を合計10人程度集め、駒場祭後の122日に初回の会議を行い、活動方針などを話し合いました。

4学期制の導入に至る経緯

4学期制はそもそも、秋入学の導入に失敗したことから代替策として計画されたものでした。濱田総長のもと、20117月に秋入学の導入を検討していることが発表され、20121月には5年後をめどに秋入学へ移行する計画が明らかにされました。しかし、京都大学などの他大学と歩調が合わなかったことや、東大内部での反対などにより、201210月には秋入学ではなく、春入学・卒業を維持したまま秋始業にする計画となりました。さらに、20131月には秋入学への移行は困難であるとし、6月には、4学期制を2015年度までに導入する予定であると発表しました。

学生に向けて新学事暦の詳細が発表されたのは、前期課程の学生向けには201481日、後期課程の学生向けには929日でした。このとき初めて、移行期間の取り扱いなど、在学中の学生への影響が明らかになりました。

1015日、駒場キャンパスにて「濱田総長と語る集い教育改革と新学事歴で学生は変わるか」というイベントが行われました。留学経験のある日本人学生や留学生と、濱田総長、3人の教授によるディスカッションの後、質疑応答の時間が設けられました。質疑応答では新学事暦に対する多くの不満が寄せられました。

参考リンク:

1224日には、工学部生向けの新学事暦説明会がありましたが、導入が迫っているにもかかわらず、多くの問題点が残されていることが明らかになりました。

参考リンク: